近くに川がある。自然の観察が好きなので、散歩コースにしている。
上から鯉がよく見えるのだが、餌をやる人がいるのか、橋の下にたむろしている。何をもって人の気配を感知しているのか分からないが、近寄ると口を開けて群がってくる。今日はいつもより数が多く、心なしか普段より必死だった。流れてくる泡や草を我さきに誤食していた。鯉たちの間で何があったのだろう。雑食らしく、食べるものには困らなさそうなのに。
群がる鯉といえば、福岡県の宗像大社の鯉は圧巻だった。池に鯉が放たれており、鯉のえさが販売されているのだが、池の岸に近寄ると、ものすごい勢いで群がってくる。鯉が鯉の上に乗りあげ、体がほぼ水から出る。生きた魚類が水から出たときの、うろこの生々しさというのはうろこが大きいほどくるものがあって、餌をなるべく遠くにばらまいてすぐその場を去った。
世界遺産に登録されて何年か経っているので、鯉の環境も整備されているかもしれない。今はどんな風なのかしらないが、強烈な鯉体験をした神社だった。
そういえば、鯉が爆食する昔話があった。
池に立派な鯉を飼う旅館がある。その旅館は夜の内に用意した握り飯が朝になるとなくなっている現象に頭を悩ませていた。従業員の仕業では、と見張りをしたところ、犯人が鯉だったという話だ。
他にも、鯉にまつわる話はお供えものなど食が絡んでいたような気がする。
昔から、食べることと強く関係した魚だったんだろう。逆に人は鯉を食べていたそうだし。
そんなに、鯉は食べたくないなあと思う。食べろと言われたら食べるけど……。